経営改善の専門家が解決します! ~会社のお困りごと相談室~

経営改善の専門家が解決します!

~会社のお困りごと相談室~

(第24話)

経営改善の専門家が今まで受けてきた300社以上の経営相談を基に、多くの会社で起こり得る問題とその対応策について、具体的なエピソードを交えて解り易くお伝えします。

 ◆本日のご相談◆  

「発注元の要望を反映できる技術力」が当社の強みだと思っています。しかし、近年は発注元の製品への要望が細かくなってきていることから、製品の手戻りが多くなっており、納品までの生産リードタイムが長くなっています。

コスト削減を図らなければいけないことは認識していますが、社内の各部門はそれぞれ精一杯頑張っているため、何から手を付けていいのか分かりません。技術力の高さという強みを活かしつつも、生産リードタイムを短縮させコスト削減を実現するには、どうすればよいでしょうか。

【ご相談の会社について】

基本データ

(業種業態)プラスチック容器製造業

(売上高)310百万円

(収益状況)経常黒字(500千円)

(従業員人数)25名

(借入金総額)80百万円

会社の現状

業界を取り巻く環境は、円安に伴い原材料価格の大幅な上昇、電力料金・運送費用等の増加等により、厳しい状況で推移。このような中で設備投資を敢行し、生産の増加と順調な受注状況により、売上高は伸びている。しかし、コスト削減に努めているものの、原材料高騰を製品価格に反映できず、経常利益は前年度割れが続いている。

【ヒアリング内容】

・ご相談の会社には、販売部門、製造部門があり、製造部門には、設計部、製造部、検品部がある。

・製造部門の中で、手戻りが多くなっている。その多くが設計部と製造部のやり取りであり、販売部門はなぜ時間を要するのか理解していない。

・発注の度に、毎回、設計担当者が個別の設計を行っている。

・別の発注元から同じような注文・要望・クレームがある場合でも、各部門で案件ごとに対応している。

・発注元からの製品形状に対する要望は細かくなっているが、納期優先の要望は変わっておらず、販売部門も交渉できていない。

【見えてきた課題】

相談者(副社長)と工場長、各部門へのヒアリングと生産工程の分析により、以下の課題が明らかになってきました。

《設計は担当者個人のスキルに依存している》

設計標準化が進んでいないため、毎回個別の設計を行っている。設計は担当者のスキルに依存しており、知識・ノウハウの共有ができていない。

《過去の知見・ノウハウの有効活用ができていない》

過去の設計例や生産トラブルの対応といった知見が蓄積されておらず、新規製品の設計に活かされていない。

《部門間の意思疎通ができていない》

各部門間、あるいは同じ部門においても部所間で意見交換がなされていないため、生産トラブル等の事態に、すぐに対応することができていない。

【課題への対応策】

前述の課題から、ご相談の会社は「生産技術の機能強化」が必要であると考えました。

生産技術は生産ラインの設計と改善を行う工場経営の要ともいえ、利益を生み出すために品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)のQCD管理をする上で必要な基本要素です。

いわゆる製品やサービスを具現化するための技術である「固有技術」と、固有技術等を安定的に発揮して製品やサービスの水準を提供可能レベルに保つための「管理技術」からなります(図参照)。

生産技術といえば大手製造業に携わる人であればすぐに認識されるかもしれませんが、中小企業の場合、必ずしも生産技術という部門が設置されているとは限りません。ご相談の会社においても、生産技術部門はなく、強いていえば工場長が一部を担っているような状態でした。

ご相談の会社は、固有技術の改良には積極的に取り組んでいるようでしたが、時代の変化や発注元の要望の変化に沿った管理技術に刷新していなかったために、QCDのバランスが崩れ、生産リードタイムが伸びるという結果になっていると考えられました。全てのものづくりに関する工程・情報を一元管理する生産管理システムの導入も検討しましたが、カスタマイズに時間を要することが予想されたため、管理技術の改善に注力することを決め、以下の3点に取り組みました。

 

《①設計の標準化》

設計標準化のため、部品やユニットの仕様や属性に関する意図を明確にした。設計コンセプトやパラメータの優先順位を明確にし、それを守りつつ変更を加えることで、業務の効率化を図った。また、一定の基準に従って作図したものを標準図面とすることで、その後の変更箇所が明確になり、誰が作業しても一定の品質が保証されるようになった。

《②過去の設計物のデータベース化》

これまで設計したものの情報を収集しデータベース化した。図面を始め三次元データ、設計時の注意事項等、製品設計時に参照できる内容から、用途、製品原価、販売額、クレームの内容とその対応策といった付属情報もまとめ、製造部門だけでなく、販売部門でも検索ができるようにした。これにより、類似製品の設計時間短縮だけでなく、クレームを回避した製造方法・顧客対応を取ることが可能となった。

《③部門間の意思疎通》

販売部門長の副社長、製造部門長の工場長を正式に生産技術担当者として配置(兼任)した。各部門下の部所のリーダーを加えて、定例的に意見交換を行う時間を設けることで、設計と製造で時間を要している点、例えば0.1mmの製品設計変更がもたらす影響(コスト、納期等)といった内容について、販売部門でも理解が深まった。

【ご相談者のその後】

今回の取組みにより、設計・製造に要する時間が短縮されただけでなく、製造部門と販売部門の風通しが良くなり、受注から納品までの生産リードタイムが短縮されました。今後、益々多様化する発注元の要望に備えて、将来的には生産技術担当を専任で配置し、今回のような取組みを当社自身で実施できる体制にすることを検討しています。

 【専門家から一言】

今回は、部門ではなく、全体視点での最適化を目指す一つの方法として、生産技術機能の強化に取り組みました。固有技術の進化だけを見ていても、自社のコアコンピタンスを高めることはできません。全体視点を持った生産技術機能を強化して、安定的に自社の技術力を発揮できる強い現場を目指しましょう。

 

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