事業再生専門家が語る「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

(第19話)

《7Sとは?組織を形成するハードとソフトについて》

 経営改善を実行する際に有効なフレームワーク「7Sモデル」について、実際の経営改善事例をもとに解説します。今回は7Sを活かした経営改善のポイントについてお伝えいたします。

 「7Sモデル」を有効的に活用し、経営改善を実施した事例をご紹介してきました。

 最終回は、本フレームを活かして経営改善を実行していく際に注意すべきポイントについてお伝えします。経営改善における「(1)計画」「(2)実行」「(3)チェック」の3つのステップに分けてご説明します。

 まず「(1)計画」において重要なポイントは①共通価値に着目する、②一貫性を保つ、③戦略は組織に従う、④現状から課題化する、の4点です

【①共通価値に着目する】   

 7Sモデル図では「共通価値(Shared Value)」が中心にあり各Sと線で結ばれています。つまり「共通価値(Shared Value)」は他のSと関連させることが必要であるということです。「共通価値(Shared Value)」を明確にすることが7Sモデルの最重要事項です。

【②一貫性を保つ】   

 7Sモデルを活用した経営改善では、当然7つの切り口で改善事項を検討します。検討する中で、それぞれのSについてそれぞれが矛盾なく関連することが重要です。例えば、ITスキルが備わっていないのに(Skill)、高度な情報システム(System)を利用した業務管理を実施するなど、一貫性が保たれていない施策を構築すると実効性は低くなります。

【③戦略は組織に従う】   

 戦略(Strategy)と組織(Structure)の関係性「戦略は組織に従う」か「組織は戦略に従う」かの議論ですが、中小企業(特に零細企業)においては「戦略は組織に従う」と考えた方がより実践的です。中小企業においては、急に人員を増減させたり、あらたな部門を設置するなど、それほど柔軟に「組織」を変更できるものではありません。まずは現在の「組織」で検討できる「戦略」を実行していくことが有効です。

【④現状から課題化する】   

 各Sにおいて現状を把握した後は、その現状から「〇〇は△△すべき」と課題化することです。現状分析だけに終わらず、「理想の状態=あるべき姿」を設定し、その状態に到達する手段が具体的な改善事項にあります。

 次に「(2)実行」において重要なポイントは①優先順位を決定する、②バランスよくする、③慣性が働く、④環境変化に対応する、の4点です。

【①優先順位を決定する】   

 各Sの改善項目が実行の段階にくると「どれから手をつけるのか?」が問題となります。一般的には「ハードのS」が手をつけやすいと言われています。その中でも因果関係や共通の要因等を検討して、実行の優先順位を決定してください。

【②バランスよく実行する】   

 「ハードのS」から実行していくことが多いですが、「ソフトのS」も同時に検討・実行していくことが重要です。「ソフトのS」はその改善に時間を要しますし、変革が難しい領域だからです。また、7SモデルはそれぞれのSが影響しあっているモデルでもあります。ですので、各Sをバランスよく実行しないと改善の実効性は上がりません。強力なエンジンを搭載した自動車でも、それを受け止めるシャーシがなければ高速運転ができないことと一緒です。

【③慣性が働く】   

 人や組織は「慣性が働く」ものです。「慣性」とは「現状にとどまる力」という意味ですが、改善や改革においては、その変化を嫌う抵抗=「慣性」が働きます。これを当然のここと受け止めて推進していくことが重要です。

【④環境変化に対応する】   

 7Sモデルは企業内部にフォーカスした改革モデルです。しかし企業はその取り巻く外部環境にも対応し、経営改善を実施していく必要があります。また外部環境は日々変化しています。その環境変化に対応し、企業を成長させていくことが経営の命題です。7Sモデルも外部環境の変化に対応させていくこと(見直すこと)が重要です。

 最後に「(3)チェック」において重要なポイントは①定点観測する、②自社の成長を認識する、の2点です。

【①定点観測する】   

 7Sモデルを活用した経営改善では、その改善項目は多岐にわたります。また即効性のあるもの、改善まで時間がかかるもの、効果がわかるまでタイムラグもあります。前述のように各Sにおける改善をバランスよく実行していくためには定点観測が必要です。1週間スパンでは、実行してきた行動を観測します。1カ月スパンでは改善ゴールまでの方向性がぶれていないか、スピードは順調かを観測します。定点観測することでその変化を見極めながら改善を推進することができます。

【②自社の成長を認識する】   

 改善や改革が社内に浸透してくると、少しの成長が見えにくくなります。しかしその成長はある部門、ある人においては大きな変化となることが多いです。その変化を成長と認識して記録・評価していくことで、組織のモチベーションを向上させることができます。モチベーションは改善活動や改革行動を継続する意思となり、永続的な企業成長につながります。

以上が7Sモデルを活用した経営改善のポイントですが、実例を表にまとめたものを記載しますのでご参照ください。

【7Sモデルを活用した経営改善事例】

事例企業の概要:製造業、年商20億円、従業員数60名、単年度赤字

符号 ポイント 具体的実施事項
(1)-① 共通価値に着目する 経営理念を改めて作成し、より具体的に行動するためにクレドを作成した
-② 一貫性を保つ 現状(特に経営資源について)を共有認識とするため、全社で現状分析会議を開催した
-③ 戦略は組織に従う 現状の組織を変更せずに対応できる戦略・戦術を検討した
-④ 現状から課題化する 各Sが影響する各部門で課題を抽出した
(2)-① 優先順位を決定する 改善事項を列挙したうえで、経営会議において優先して実行すべき項目を指示した
-② バランスよく実行する 改善項目の因果関係を明確にし、効果に時間がかかる項目(特に人材育成)についても同時に取り組みを開始した
-③ 慣性が働く 営業部門が「抵抗」したが、外部コンサルが説得し強力な推進力で「動き」を付けた
-④ 環境変化に対応する 計画期間は3年であるが、1年ごとに外部環境分析を行い、計画を修正(ローリング)している
(3)-① 定点観測する 1週間単位で事業所会議、1カ月単位で経営会議を実施しモニタリングしている
-② 自社の成長を認識する 社内表彰制度、人事評価制度を導入し、成長を評価する仕組みを構築した

本シリーズは今回で最終回になりますが、取り上げたテーマである「7Sモデル」の理解が深まることにより、皆様の企業がより一層成長されることを祈念しております。

 

                                                

                                  前田 節(まえだ とも)

悩みを身近に相談し、解決できる
新たな「経営プラットフォーム」

経営に関するあらゆるご相談を承ります
	まずは無料相談から!!