事業再生専門家が語る「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

(第18話)

《7Sとは?組織を形成するハードとソフトについて》

 経営改善を実行する際に有効なフレームワーク「7Sモデル」について、実際の経営改善事例をもとに解説します。今回は7Sのうちの人材(Staff)にフォーカスしていきます。



【人材(Staff)】   

 他の6Sの全てと関連し、7Sの中核である「価値観(Shared Value)」の重要性はこれまでに述べてきました。変更が比較的容易とされる3S(戦略、組織、システム)も、変更が困難とされる「価値観(Shared Value)」以外の3S(人材、スタイル、組織能力)も、【価値の共有】が無ければフレームワークが出来るだけで、本来の経営改善が進みません。価値を共有し、6Sをバランス良く進めるのは「人材Staff)」です。では7Sモデルにおける「人材(Staff)」の考え方はどのようなものなのでしょうか?

7Sモデルの「人材(Staff)」を改善する上で、重要な要素は以下の通りです。

1. 組織にいる人材の数や質、考え方の傾向を全体的に把握する

2. どのような能力をもった人材が何人いるかを詳細に把握する

3.採用課程の詳細を把握する

4.各現場での人材育成の現況を把握する

5.各個人への業務割当ての方法を把握する

6.各現場での人事評価の方法を把握する

7.指示系統の現状を把握する

8.各現場のリーダーシップのあり方を把握する

 7Sモデル図の通り、「人材(Staff)」は、「価値観(Shared Value)」、「組織(Structure)」、「組織能力(Skill)」へと繋がって行きます。上記1は「価値観(Shared Value)」に大きく影響します。経営者の理念や価値観を浸透させる上で、コミュニケーションの充実が最も重要です。その基礎が1にあります。また、2、3、8は「組織(Structure)」を改善する際に役立ちます。最適な組織再編と適材適所で、最も能力を発揮できる体制を構築できます。これに4、5、7を加えることで、「組織能力(Skill)」へと関連付きます。人材育成プログラムの改善により、組織能力の底上げが図られますし、能力に合った業務割当てで生産性も高まります。また、経営からの指示が正しく伝わることで、個々のモチベーションは高まり、組織能力の最大化に繋がって行きます。人事評価が制定されていない現場では、6により、各現場の状況に応じた制度の構築に繋がります。これは制度ありきではなく、「価値観(Shared Value)」を共有しながら、「システム(System)」に関連付いていくということです。
 

それではここで、企業全体の戦略の見直しと、人材、組織の改善に取り組んだE社の事例を見てみましょう。



【戦略・システム・スタイルの3Sの改善に着手】

 【E社 製造業】

 E社は顧客の要望をヒアリングしながらフルオーダーで機械設備を開発、生産する製造業です。直近10年は成長産業にある特定顧客1社からの注文で、業績を大きく伸ばしてきました。しかし、その生産設備が一定数、行きわたったことで、受注量が減少してきました。技術開発型の企業で1社への対応だけで十分な利益が確保できていた為、自社による情報収集や営業活動を全く行っていませんでした。営業人材も体制も無い中、売上の減少に歯止めがかからず、3期連続で営業赤字を計上することとなりました。そのような中、戦略の転換、営業体制を整備する為の組織見直しに取り組むことになりました。


【経営分析】

・ 販売先が概ね1社であり、経営基盤が不安定である。

・「ものづくり」をする組織能力はあるが、商品やサービスを開発し販売するノウハウ及び体制がない。

・ 経営理念などの価値共有はできており、組織的な取り組みが可能と思われる。

・ 地元志向の強い従業員が多い。

・ 会社の考えや施策を好意的に受け入れる従業員が多い。

・ 経営管理を行う為の必要なデータを有しているが、収益目標などが明確でなく、活用できていない。

・ 資金繰りは過去の蓄積と金融機関からの支援で、現状安定している。

【取り組み】

 弊社コンサルタントがファシリテーターとなり、営業体制のあり方、販売ノウハウの蓄積方法、経営及び営業の管理方法について、代表者及び経営幹部と数回打合せを実施。既存社員の能力の棚卸しと新しい人材の獲得を計画。その後の営業拠点の運用方法などを決定した。

・ 営業人材2名を新しく獲得する

・ 既存社員(技術者)で営業経験のある従業員を新設の営業部へ配置転換する

・ 2年以内に営業拠点を3箇所にする

・ 市場調査による情報を共有し、新商品を開発できる仕組みを構築する

・ 営業力強化で必要な課題を共有し、解決策を導き出せる仕組みを構築する

・ 営業管理の帳票を作成する

【成果】

・ 営業体制の構築と人材の活用により、新商品開発に必要な情報を入手できた

・ 営業及び技術との情報共有でスムーズな商品開発ができた

・ 上記により、新分野への参入が可能となり、得意先数も飛躍的に増加。売上が安定した

・ 売上、収益目標が設定できるようになり、従業員のモチベーションが向上した

   

 E社の成功のカギは、1社依存体質からの脱却を集中的に実施できた点にあります。会社全体で集中的に取組めた背景には、経営の考え方や会社の状況を共有できていたことが大きく影響しています。危機意識が会社全体に浸透し、従業員の特性とも関連付き、会社全体の協力体制が醸成していったものと考えられます。また、これまで売上などの業績目標は特定の1社の業績に左右される為、独自で目標を立案することができませんでした。しかし、自社ブランド商品で新分野に参入できたことにより、独自の売上、収益の目標を設定することができる様になりました。これにより、各営業拠点が切磋琢磨する環境が整備され、各営業員のモチベショーン向上にも繋がっています。
 

 次回は、シリーズの最終回となります。これまでの集大成として、経営に強い会社になるためのポイントについてお話いたします。

 

                                                

                                  前田 節(まえだ とも)

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