事業再生専門家が語る「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

(第16話)

《7Sとは?組織を形成するハードとソフトについて》

 経営改善を実行する際に有効なフレームワーク「7Sモデル」について、実際の経営改善事例をもとに解説します。今回は7Sのうちの組織能力(Skill)にフォーカスしていきます。



【組織能力(Skill)】   

 あの人、能力高いよね」「これは自分の能力不足です」など、「能力」という言葉は頻繁に使われています。しかし、それは当事者間で前提条件の共有があるから通じる会話です。「能力」だけでは、どのような力があるのかわかりません。

 モノを持ち上げるのであれば腕力、モノを売るのであれば営業力が必要です。ほかにも、アイデア力や企画力、交渉力、開発力、持久力など「●●力」で表されるものはたくさんあります。「能力」とは、それらの上位概念といえるでしょう。能力の向上を図るのであれば、具体的にどのような力を身に付けるかを考えることが大切です。

 例えば、「自分はもっと自社の商品を売れるようになりたい」と考えている人が、腕力を身に着けても無意味です。これは極端な例だとしても、「自分はいつも顧客に言いくるめられて何も売ることができない」と考えるのであれば、必要なのは交渉力でしょう。「自分の話に興味を持ってもらえない」と思うのであれば、差別化を図る意味でアイデア力などでしょうか。

 いずれにせよ、能力向上のためには目的意識を持ち、目的達成のためのストーリーを描いて必要な力を選ぶことが不可欠です。

 組織能力も同じことが言えます。社長が「わが社の能力は低い!向上させよう」と言っても、社員には何をすればいいのか分かりません。「○○の目的を達成したいから、△△の力をつけて、□□の手段目的を達成する」とゴール、手段、方法を明らかにしてこそ、組織能力は高まります。 

 また、能力向上のためには「どのように」という視点も大切です。人であれば、本を読む、資格を取る、その能力を身に着けられる部署に異動願いを出す、転職する、などありますが組織ではどうでしょうか。

 「組織は人の集まり。構成員1人1人の能力を向上させるだけじゃないか」と考える方もいるかもしれません。しかし私は、人と同様に組織にも様々な方法があると思います。

 7つのSがそれぞれ結び付いた図を見てください。組織能力は「価値観」、「スタイル」、「人材」と結びついています。社員の能力向上が組織の能力向上に結び付くということを、この結びつきは表しているといえるでしょう。

 ただ、個々の社員の能力が、組織能力向上のために描いたストーリーに沿った形で発揮されるかは別問題です。その能力をどのように発揮し、どこに向かうかが共有されていなければ、個々の社員の能力はまとまりなく発散されるだけです。そうした事態を避けるためには組織能力から伸びているもう1本の線である価値観を定め共有することが大切です。

 そしてもう1つ、組織能力を構成員に由来するものでなく、共有可能なノウハウとして捉えるなら、組織としての能力は構成員がいかに早くそのノウハウを習得し、忠実に実行できるかにかかってきます。

 たとえば、ある有名な大手企業は「営業は科学だ」と言い切り、営業方法を完全マニュアル化しています。その会社にとっては、営業力を高めるためには社員にもとめるものは個々の営業力ではなく、マニュアルに対する実行力です。これは、組織能力から伸びる最後の線の先にある「スタイル」と言えるでしょう。

 

 それではここで、企業全体の価値観の見直しと共有を核として、組織能力改善に取り組んだC社の例を見てみましょう。

 

【戦略・システム・組織能力の3Sの改善に着手】

 【C社 運送業】

 C社は年商15億円の運送会社です。複数の事業所を展開されておられますが、「各事業所の今後の方向性が明確に定まっていない」という大きな問題を抱えておられました。また、創業社長から二代目社長への事業承継を進めていくタイミングに差し掛かったことを機に、後継者の教育と同時に、経営管理の新たな仕組みづくり、経営幹部の研修に取り組むことになりました。

・戦略:「各事業所の今後の方向性が明確に定まっていない」という大きな問題への対応

・システム:経営管理の新たな仕組みづくり

・組織能力:経営幹部の研修

【C社の経営分析】

・事業所長の実行力やモチベーションに左右されやすい組織運営となっている。

・長く務める従業員が多く、会社の考えや施策については好意的に受け止められやすいと思われる。

【C社の取組み】

・弊社コンサルタントがファシリテーターとなり、二代目経営者と経営幹部が膝を突き合わせて、今C社が必要としている能力が何かを考える会議を実施した。その結果、実行力とマネジメント力が必要との結論に至る。

・弊社コンサルタントがファシリテーター兼講師として、事業所長を対象にC社の現状認識を深めるためのワークと、マネジメントについてのセミナーを開催した。

【C社の成果】

・本社と事業所間でのコミュニケーションが頻繁かつスムーズに行われるようになり、本社の方針が浸透しやすくなった

・業務プロセスの効率化がすすめられ、事業所ごとに散見された非効率が少なくなった

・各事業所長が、事業所利益だけでなく、全社利益も考えた判断を行うようになった

  

 C社の成功のカギは、二代目社長と経営幹部がじっくりと話し合い、現状認識と方向性を熟慮に熟慮を重ねて出したことが第一の要因です。しかし、それだけでは成功までには至らなかったでしょう。その後、今いる場所(現状)から向かうべきところ(方向性)に進めるためにはなにをすればいいか。すなわち、どのような組織能力を強化するべきかを正確に捉えたことが、成功を確かなものにしたと言えます。 

 冒頭で申し上げたとおり、一口に「組織能力」と言ってもその形は様々です。努力と工夫で手に入るものもあれば、順を追って身に着けることができるものもあります。「資金力」を不要とする会社はないでしょうが、資金力は営業力や開発力を高めることによって強化されるものです。

 大切なことは、こうありたいという理想の姿と、そこに至るための能力強化のストーリーを描くことです。

 

次回も、具体的な成果事例をもとに、7Sを活用した経営改善について考えてみます。    

                                                

                                  前田 節(まえだ とも)

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