事業再生専門家が語る「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

(第15話)

《7Sとは?組織を形成するハードとソフトについて》

 経営改善を実行する際に有効なフレームワーク「7Sモデル」について、実際の経営改善事例をもとに解説します。今回は7Sのうちの価値観(Shared Value)にフォーカスしていきます。

 

【価値観(Shared Value)】   

 世界有数の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱したフレームワーク「7Sモデル」についてお客様にお伝えすると、よくこのように質問されます。「7S の中で最も大切な要素はどれですか?」

 7Sは、どれか1つの要素を改善すればそれで経営が一気に改善する、というものではありませんので、答えには苦心するところです。あくまで私見として、私はいつも「それはShared Value(価値観)のS でしょう」と、お伝えすることにしています。

 これも一般的にという観点からの話ですが、ハードの3S(資源の戦略、組織、システム)よりも、ソフトの4S(価値観、組織能力、人材、スタイル)の方が、「変えにくい、変化に時間がかかる」と言われています。考えればもっともなことで、ハードの3Sは「いれもの・容器」を変えることですが、ソフトの4S は人・考え方・感情・価値・風土など、変化を受け入れにくい要素を変えることになるからです。

 だからといって、経営改善は変えやすい3S要素から取り組めばよいということではありません。繰り返しになりますが、7S それぞれを絡めながら、包括的に経営を見直すことが大切なのです。

 7S モデルでは、「価値観」が他の6つのS すべてに関わる要素として中央に鎮座しています。これは「だから、価値観のSから取り組めばよい」ということではなく、価値観以外の6Sのどれに取り組むにしても、常に「価値は共有されているか」という観点をもって(原点として)取り組むべきである、という意味です。

 

 「新しい人事考課の制度を導入したが、どうもうまく機能せずシステムは1年で頓挫した」これと似たような話を、皆さんもお聞きになったことがあるかもしれません。これには2つの状況が考えられます。

 1つは、人事考課の項目が現状に合っていないなど、項目の設定に無理がある(理想が高すぎる・低すぎる)といった、システム自体に問題がある場合です。

 他方は、「なぜ人事考課制度を導入したのか」という、そもそもの目的意識や導入の先にある人材像や企業像、つまりは価値観が共有されていない・従業員間に浸透していないから、という状況です。

 多くの場合、価値観の共有が進んでいれば、システムに不具合があっても前向きな改善が見込まれます。しかし、価値観の共有という観点を取りこぼしているうちは、どんなシステムを導入しても、短期的な成果しか得ることができません。

 

 経営改善には、魔法のような手法は存在しません。冷静に、多角的に経営全体を俯瞰し、未来の理想像を描きつつ、常に現実と真正面から向き合い取捨選択を繰り返すという、日々の地道な取り組みの一つずつが集まったものが、経営改善なのです。

 

 今日の事例は、企業全体の価値観の見直しと共有を核として、システム改善に取り組んだB社の例を見てみましょう。

 

 

 【B社の場合】

業種:物流業

従業員数:500名以下

年商規模:約60億円

【B社の経営分析】

・経営そのものは順調だが、メインの物流事業以外の関連事業が多岐にわたり、統一した経営管理システムが構築されていない。

・部門別の収支状況が正確に把握できておらず、経営の最適効率化がなされていない可能性が高い。

・人材の定着率が高く、現状の経営への理解が高いと思われることから、価値の共有がしやすいと考察できる。

【B社の取組み】

・弊社コンサルタントを実行役とし、中期経営計画の実行・推進に向け、グループ全体での経営システム構築に着手(システム)

・幅広い領域に新たな仕組みを導入(システム)

○収益性・採算性を正しく見極めるための管理会計の導入

○会議体制の設計

○社内管理資料の作成

○プロジェクトチームの運営

・経営者から従業員まですべての層への理念浸透を目指し、経営理念の明確化に着手(価値の共有)

・会社の変革を内外に周知し、ブランディング再構築のため以下を実施

○ホームページ改定を実施

【B社の成果】

・不採算事業の他社への売却を進め、また売却に際しては買い手側企業にて実施した事業DD(調査分析)に協力することで、スムーズな売却を実現。会社全体としての経営最適化に成功した。

 

 B社の取組みは、ただ単にシステムの不具合を改善するだけではなく、なぜそうするのか、という価値や理念の見直しに着手し、その浸透・共有化への努力を惜しまなかったことで成功したと言えます。

 

 何かを変更したり改革したり新しく取り入れたり止めたりするときには、このように「そこにどんな価値が生まれるのか」ということを常に考え、その価値を伝えきる(隅々まで浸透させる)という意気込み、そのための具体的な方法を持つことが大切なのです。

 これは経営全体の見直しという大きな取組みにだけ言えることではなく、例えば「今日から朝礼のやり方を変える」と従業員に伝える時にでも、同じくとても大切なことなのです。なぜ今までのやり方を変えるのか、新しいやり方はどんな価値を生み出すのか、その価値は職場全体にとって好ましい成長を促すものであるか。それらの問いに対して経営者自身が明確な答えを先に持っておく、あるいは従業員と一緒にその答えを探すという姿勢を持っていることが重要です。

 

次回も、具体的な成果事例をもとに、7Sを活用した経営改善について考えてみます。      

                                                

                                  前田 節(まえだ とも)

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