事業再生専門家が語る「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「7Sでかわる 経営改善を可能にするマネジメント」

(第14話)

《7Sとは?組織を形成するハードとソフトについて》

 今回から全6回にわたり、実際に経営改善を実行するときの考え方について、実例を交えてお伝えしていきます。経営改善を実行する際に有効なフレームワーク「7Sモデル」を活用すれば、表面的でない、骨太の経営改善を実現できます。

 

【7Sモデル】  

 7Sモデルとは、世界有数の戦略コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱したフレームワークで、企業における7つの資源の相互関係を表すものです。7つの資源は、1つずつを順番に改善するということではなく、それぞれを絡めながら、包括的に経営を見直し多角的に改善に取り組むことが重要です。 

 7つの資源は以下の通りです。

【ハードの3S】

(1)戦略(Strategy):事業の方向性や経営課題解決の優先順位を決めること。事業の優位性や強みの分析が重要。

(2)組織(Structure):組織の形態や構造。事業部別、機能別の設計、指揮系統や責任の所在など。

(3)システム(System):人事評価、会計システム、情報の流れなどの、組織の仕組みや基本構造。

【ソフトの4S】

(4)価値観(Shared Value):組織内での共通の価値観や理念のこと。経営者と従業員、従業員間で相違がないか、また浸透しているかどうかも重要。他の6S すべてと強く関連する7Sの中心。

(5)組織能力(Skill):営業力、技術力、マーケティング力など組織に備わっている能力。

(6)人材(Staff):社員や経営者など個々の人材の能力。

(7)スタイル(Style):社風、組織の文化。経営スタイルや職場環境も含まれる。

 (1)~(3)はハードの3S、(4)~(7)はソフトの4Sと呼ばれます。ここでいう「ハード」「ソフト」とは、コンピュータの「ハードウェア」「ソフトウェア」と同じ意味合いだと考えていただくとわかりやすいかと思います。コンピュータのハードウェアとは、機器の総称、つまりコンピュータ本体、マウス、キーボードやハードディスクなどを指します。

 一方のソフトウェアとは、コンピュータを動かすためのプログラムや命令を記したデータのことです。一般的にはOSやアプリケーションなど呼ばれています。

 コンピュータが効果的に動作するためには、ハードウェアとソフトウェアのどちらもが必要なのと同じで、企業経営もハードの3Sとソフトの4Sがバランスよく効率的に影響し合い動作することで、最善のパフォーマンスを生み出すことができるのです。

 ハードのSは、意思や計画を持っていれば変更しやすく、比較的手がつけやすいという特徴があります。一方でソフトのSは組織の風土や文化、従業員個人の価値観や感情面などに関わるので、短時間に変更することは難しいとされています。

 だからといって、手が付けやすいハードの3Sの1つの要素だけにフォーカスして強化しても、一時的には改善されたように見えますが、他の要素との関連付けがなされていないため、長続きせず、思うような成果が上がりません。経営改善を実行する際は、7つの要素=7Sを包括的に捉えて、すべてのSがバランスよく連携を取って、経営改善の方向性とマッチしているかどうかをチェックすることが重要なのです。

 

 【7Sフレームワークで経営分析】    

 では早速、7Sフレームワークを活用して経営分析をしてみましょう。

 ここでは、具体的な成果事例を挙げながら考えてみたいと思います。皆さんもぜひ、事例をもとにご自身の組織について7S で考察してください。

 

【A社の場合】

業種:建材卸売業

従業員数:500名以下

年商規模:5~10億円

【A社の経営分析】

・従来は大手ゼネコンを得意先とする中堅商社への売上がメインであったが、利益率の低さと回収サイトが長いことで資金繰りが厳しい。(戦略)

・従来顧客のリピート注文に依存しており、新規顧客をあまり獲得できていない。(戦略、スキル)

・丁寧なフォローや仕入れルートの多様性など、伸びしろのある強みがある。(戦略、スキル)

・仕事に誇りを持つ従業員が多く、価値観が浸透している。(価値観、人材)

・蓄積されたスキルを持つ従業員は多いが、新しい知識をもった人材が不足している。(スキル、人材)

【A社の取組み】

・多様な仕入れルート、高いフォロー力・提案力というスキルを生かし、地域建築会社や地元ハウスメーカーとの取引を拡大させる戦略に転換。(戦略)

・キャリア採用に力を入れ、ハウスメーカーに営業経験を持つ営業マンを複数名採用。(スキル、人材) 

【A社の成果】

中堅商社の依存度が90%⇒15%まで低下し、売上は低下したものの利益総額は増加し、資金繰りも大幅に改善した。

A社では、戦略(Strategy):事業の方向性」の見直しが功を奏しました。

「戦略」とは事業の方向性や事業ドメインを示すものです。「戦略」を見直すステップは以下の通りです。

①経営理念・ビジョン設定:戦略を設定する基盤となるもので、経営者が決定する。

②環境分析:自社の内外の環境を分析すること。特に経営資源の過不足を把握することが重要である。

③成功要因の抽出:目標・目的を達成する上で,重要な(決定的な)影響を及ぼすと思われる要因を抽出すること

④戦略オプションの立案:外部環境の変化などに応じて、事業目標に到達するために戦略オプション(戦略案)を何通りか考え出す

⑤戦略オプションの選択:戦略オプションごとに、予想される成果や必要となる経営資源、実行の難易度などを検討し、実行すべき戦略を絞り込み、選択する

 

次回からも、具体的な成果事例をもとに、7Sを活用した経営改善について考えてみたいと思っています。       

                                                

                                  前田 節(まえだ とも)

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