事業再生専門家が語る「成長する企業と衰退する企業の経営」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「成長する企業と衰退する企業の経営」

(第13話)

《組織と人材の活性化について》

   300社以上の事業再生案件で成果を上げてきた専門家の視点から、成長する企業と衰退していく企業の経営について、具体的な事例も交えてお伝えしていきます。

 今回は、組織と人材の活性化についてお話いたします。

 

【「活性化」とは?】  

 「職場の風通しの良さが、組織や人材の活性化へと繋がる」と言われれば、多くの人はうなずかれるかもしれません。しかし、私は違和感を覚えます。

 風通しの良さとはなんでしょうか?「風通しの良い職場」とは、物理的な現象に組織のあり方を例えただけです。何がどうなっているかは曖昧模糊としているので、例えば多くの従業員が閉塞感を感じているような状況であっても、何か1つを捉えてこじつけてしまえば、風通しなるものは良いものになってしまいます。

 「活性化」と言う言葉も同じです。やはり、ぼんやりイメージできる程度。それにも関わらず、会社全体や部署の目標に「活性化」を掲げたらどうなってしまうでしょうか?

 ある人にとっての活性化は、大きな声で活発に挨拶が交わされることかもしれません。また、ある人にとっては、若い社員に大きな仕事が任され、若い社員が主体となっていることかもしれません。人それぞれに活性化のイメージが違う結果、気が付けばそれぞれが違う目標に向かってしまっている、ということにもなりかねません。

 

【組織と人材が活性している状態】    

 そこでまず、組織と人材における「活性」と「活性化」について、定義したいと思います。

 まず、「活性」。私は、自らの中に意義を見出して事業や仕事に取り組んでいる状態が、組織や人材が活性している状態だと考えます。やらされていると感じたり、「これしかないから」と残された選択肢として自分の仕事を捉えたりしているのは活性していない状態です。そして、「活性化」とは、組織と人材がその事業や仕事について自らの中に意義を見出すことだと考えます。従業員が、「命令されているからやっている」と思うのと、「やりたいからやっている」と思うのとでは、職場の雰囲気も、業績もすべてが大きく変わってくるのはご想像頂けると思います。

 

【外発的動機付けと内発的動機付け】   

 これらの状態を、モチベーション理論では、それぞれ「外発的動機付け」、「内発的動機付け」という言葉で説明しています。前者は外からの刺激で人が動くというもので、これを達成したらこういう報酬を与えますというインセンティブに動かされる状態です。もしくは、しなければ職や報酬を失うといった動機で仕事などに取り組むことです。

 それに対して、後者の「内発的動機付け」は、自分の中に理由を見つけ、それが取り組む動機となることです。誰から何も与えられなくても、自分自身で目的や理由を見つけるのですから、これほど強いものはないでしょう。

 そして、私は、まさにこれこそが人材や組織が活性している状態であると考えます。

 では、いかに人材や組織は活性化するのでしょうか。

 例えば、生活の糧たる給料をもらうためにだけに働いている、と言い切る社員。そんな彼を活性化させるためには、どうしたらいいのでしょうか。

 まずは組織が内発的動機付けられること、すなわち活性化が行われることが必要となってくるでしょう。内発的動機付けは人だけではなく、組織についても当てはまる考え方です。

 会社が、商品やサービスを開発したり提供するのはお金を得るためで、それが会社の第一目的であることは言うまでもありません。しかし、お金を得ることだけが目的であれば、ほかにもっと割のいい事業はあるかもしれません。それにもかかわらず、その事業をしている理由を組織は持つことが必要です。なぜ、社会に対してその商品やサービスを提供しているか、です。そういった「使命」や「責任」を持ち、自覚するからこそ、組織はより良い商品やサービスを提供しようとし、それが売上へとつながり、また人材の育成へとつながっていくはずです。

 「売上のためだけ」なのであれば、社員に対してもその考えを許容するべきです。たとえば、先ほど例に挙げた社員が「お金のため」というならその考えを認めなければならず、認めるならば、仮に従業員が遺産を相続したり宝くじに当たって退職を申し出た時、引き留めることはできません。唯一の目的たるお金を、働いて得る必要がなくなったのですから、「それが正解だよ」と言って笑顔で送り出さなければなりません。

 

【理念の重要性】    

 いささか極論を申し上げたかもしれませんが、組織に関して言えば、日本の多くの会社は、なぜ自社が存在し、なぜ商品やサービスを提供しているかという存在意義の重要性を認識しています。

 たとえば、会社パンフレットを開いたら、多くの会社はその想いを「理念」として言葉にし、1ページ目に記しています。また、ホームページでも理念は会社概要の上部に記載されていたり、別途ページを設けて紹介されています。理念や価値観、ビジョンをしっかりと言葉にして、顧客をはじめ会社に関わる全ての人々に知らしめようとしているのは、それだけその重要性を認識している表れでしょう。

 近年、「地域貢献」を理念に掲げる会社が多くなりました。私の知る、ある会社も地域貢献を理念に掲げ、事業を通して地域を豊かに、また収益を様々な形で地域に還元することを存在理由とし、定期的に理念について学び理解を深める機会を社員に対して設けています。その会社の従業員は、「御社の理念は?」と聞かれれば全員が答えることができます。決して丸暗記の結果ではなく、それだけ学ぶ機会が多く、また理解を深め共感をしている結果だと私は考えます。

 その結果、その会社の新卒採用は理念に共鳴した学生の応募が増えました。もちろん、会社の本分として収支計画を含めた事業計画は厳しく管理しているものの、理念で1つにまとまった人材は「なぜ働くか」「なぜ今の仕事をしているか」「なぜこの会社か」に悩むことがなく日々を送っていますが、私はこのような状態を組織と人材が活性化していると思います。

 ただ、残念ながら理念が形骸化してしまっている会社も少なからずあります。従業員どころか、経営者すら自社の理念をすぐには答えられないことも珍しくはないでしょう。

 ある会社の経営者も理念を思い出すことができませんでした。挙句の果てには「理念が無くても」という理念不要論を語り始める始末です。しかし、その会社の離職率は、近年同業他社に比べて突出して高く、恒常的に人手不足に苦しんでいます。従業員が「この会社で働く理由」を持てなかったことが主な原因ではないかと、私は考えます。

 

【活性化とは、「なぜ」を問うこと】

 残念なことは、大企業に比べて中小企業においては理念を大切にしている会社が少ないということです。「理念やビジョンは大企業が作るもの」「理念やビジョンでは飯が食えない」と考えているなら、考えを改めて頂きたいところです。

 経営が外部環境に左右されやすいなど、不安要素の多い中小企業ほど1本の芯として理念をしっかりも持つべきでしょう。なぜなら、組織と人材の活性化とは、自らに対して「なぜ」を問い、答えを出すことです。組織も人材も、与えられた答えではなく、自ら出した答えのもとでは、達成意欲や貢献意欲は力強く、長続きがします。そしてまた、組織と人材はその答えを一つにすることがさらなる強さ、すなわち活性化をもたらすのではないでしょうか。

                                                                  

                                  前田 節(まえだ とも)

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