事業再生専門家が語る「成長する企業と衰退する企業の経営」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「成長する企業と衰退する企業の経営」

(第11話)

《マーケティングの重要性と強化する方法について》

   300社以上の事業再生案件で成果を上げてきた専門家の視点から、成長する企業と衰退していく企業の経営について、具体的な事例も交えてお伝えしていきます。

今回は、マーケティングの重要性と強化する方法についてお話いたします。

 

【マーケティングとは?】 

 ビジネスに携わっている人にとって、「マーケティング」は日常的に耳にする言葉だと思います。

 しかし一概にマーケティングと言っても、現状は「データ分析」「リサーチ」「販売促進」「テレビや新聞宣伝」等、多種多様な解釈があります。

 ピーター・ドラッカーは、“ マーケティングの理想は、販売を不要にするものである”と述べており、フィリップ・コトラーは、“マーケティングとは、個人や集団が製品及び価値の創造と交換を通じて、そのニーズやウォンツを満たす社会的・管理的プロセスである”と述べています。

 上記のように様々な解釈がありますが、マーケティングを難しく考える必要はありません。「マーケティング」とは、簡単に言えば、“ 売上を作るための活動全般” のことなのです。

 

【衰退する企業はマーケティングを重視しない】   

 成長している企業はマーケティングを理解し戦略に一貫性が取れていますが、残念ながら、衰退する企業はそもそもマーケティングを重視していません。重視しない理由としては、下記のようなマーケティング手法をどう使うのかが分からないということが挙げられます。

 ・SWOT ・4P ・3C

 ・STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)

 【3C】



 また、このような手法をマーケティング戦略の中でどう絡ませば良いのか分からない、とっつきにくい等、ある種の抵抗感のようなものに起因することも考えられます。 

 上記のようなマーケティング手法を知れば、それだけで売上は上がるかというと、そうではありません。衰退する企業の共通点としてありがちなのは、マーケティング手法を知り、理解したつもりで断片的に行うことです。つまり、戦略を無視して一部分のマーケティング手法を駆使し、小手先のテクニックで販売してしまうのです。

 小手先のテクニックは、短期的に売上を上げる方法ですので、会社の方向性を無視しがちです。売る人間はどんな方法であっても売上は欲しいですし、会社も売上が上がるのであれば、どんな方法でもやめさせにくいからです。そのような会社は、売れなくなれば、今度は違う新たなテクニックを使って販売することになります。結果戦略と販売方法の一貫性がなくなるのです。  

 

【マーケティングには一貫性が大切】   

 マーケティングの要素として最も大切なことは、戦略に一貫性があることです。成長している会社はマーケティングを理解しており、さらに一貫性があります。なぜ、一貫性が大切なのかを、当社のクライアントの飲食店を例に、簡単にご説明します。

 そのクライアントの強みは、「手の込んだ料理・サービスとリピーターの存在」です。狙う市場は「ゆっくりと美味しく食べられる場所」、ターゲットは「食事にこだわる地元住民」です。しかし、徐々に客数が減少し、売上も厳しい状態でした。そこで、クライアントが考えた方法は、「新規顧客を呼び込むために、新規の方のみ安くなる割引券を近所にポスティングする」というものでした。

 この方法は、短期的には売上が増加するので、新規開拓の場面でよくやりがちです。しかし、戦略が一貫していません。新規客のみに割引券を渡してしまうと、リピーターである既存客はどう思うでしょうか?また、安く提供するようになってしまうと、客数をさらに増加させる必要があるため、お店でゆっくりできなくなります。こうなると既存顧客、リピーターが減少し、長期的にはさらに経営が悪化することになります。

 そこで、その戦略を見直しすることになりました。行ったことは、既存顧客の接客強化と手の込んだ料理を見やすく、イメージしやすくするためのメニュー表の変更です。そして、おすすめ商品の試食、試飲を始めました。結果、オーダー数が増え、顧客満足度も高まったため、客単価と来店頻度が増加したのです。

 「強みを理解してくれる顧客」を取り込む。言われてみれば当たり前のことなのですが、現実はそうではないのです。ブランド力が強みであるアパレルショップのセール乱発などはその一例です。一貫性のないマーケティング戦略は、自社の強みを自ら打ち消しているため、長期的に見れば企業を衰退させることになります。

 一貫したマーケティング戦略によって、各事業部が行うことが決まります。先ほどの飲食店を例にすれば、接客人材を採用する場合、テキパキとこなすタイプより、気の利いたサービスが提供できる地元の人が基準となります。IT戦略においては、新規顧客向けではなく、既存顧客・リピーターのためのSNSコミュニティの提供等、を行うことになります。

 

【マーケティングの重要な要素】 

 前述の通り、成長している会社はマーケティングを理解しており、戦略に一貫性が取れています。一貫性で必要となる要素は、“競合”“強み”“マーケット”“ターゲット”です。

 つまり、競合にはない、自社の強みを評価してくれるお客様(ターゲット)が、どの市場(マーケット)にいるのかを探す必要があります。

 そのためには、まず、自社の強みを知ることが重要となります。ここで気を付けなければいけないことは、強みは、“競合と比較しての強み”であり、競合と比較しない思い込みの強みでは、それは強みではない可能性があるということです。

 例えば、自社の強みを「多品種の在庫を抱えており、すぐに対応できる」と思い込んでいても、競合も同じことをしていれば、強みではなく、それが普通だということです。

 

【マーケティングを強化する方法】

 マーケティング戦略は、各部署の戦術レベルの施策を統括する、ガイドライン的存在となります。どのような場所、相手に販売、販促をするのか、どのような人材・ITを採用するのか、という各施策は、「いつ、誰に、何を、どのように」というマーケティング戦略に依拠します。当然ながら、ターゲットによって、価格、チャネル、販促、IT施策等が全く違うため、もし各部署が自社のターゲットを間違っていれば、各部署の施策がバラバラになってしまいます。マーケティングを強化するには、まず、自社のマーケティング戦略を全員が理解することです。

 その後、戦略を数字にします。売上計画をたて、そのための投資や販売方法、人材、ITを決め、具体的なアクションプランを考えます。そして、そのアクションプランを実行、結果を評価し、戦略を修正するPDCAサイクルを回せば、マーケティングが強化されていきます。 

 

【まとめ】 

 マーケティング戦略の意思決定は、社長や経営幹部の方にとって極めて重要です。

 マーケティングの失敗は、「売れない」という結果に直結します。

 社長や経営幹部にとってマーケティングを理解することは、経営継続にとって不可欠であるということです。

 自社の強みを評価してくれる顧客、市場を探し、顧客のことを考え、顧客が必要としているものを提供できれば売上は必然と上がります。

 読者の皆さまも自社に当てはめ、マーケティングについて再点検し、売上が増加するためのヒントを得ていただければ幸いです。                                                                   

                                  前田 節(まえだ とも)

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