事業再生専門家が語る「成長する企業と衰退する企業の経営」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「成長する企業と衰退する企業の経営」

(第9話)

《経営計画の重要性と策定手法について》

   300社以上の事業再生案件で成果を上げてきた専門家の視点から、成長する企業と衰退していく企業の経営について、具体的な事例も交えてお伝えしていきます。

今回は、経営計画の重要性と策定手法 についてお話いたします。

 

 みなさまの会社では、経営計画を作成されていますか?

 株式を公開する上場企業は経営計画やそれに類する計画を策定・公表しています。コンサルティングの現場の実感として、中小企業でも経営計画を策定する会社が増えており、成長する企業のほとんどが経営計画を策定しているといっても過言ではありません。

 一方、再生の状況に陥っている企業では、計画が社長の頭の中にあっても明文化されておらず、経営層や社員に共有されていない状況が多く見られます。経営計画を策定していない理由は、経営環境が年々変化する中で計画を立ててもあまり意味がないと思っている、社長が日々の外回りや現場管理で忙しく計画を策定する時間がない、などが聞かれます。

 しかし、経営は行き当たりばったりで上手くいくものではありません。将来にわたって事業を継続させ、目標を達成するためには、そこに至るロードマップが必要になります。その役割を果たすのが「経営計画」なのです。

 

【経営理念・経営ビジョンと経営計画の関係】 

 前回は、『経営理念・経営ビジョンの重要性』についてお伝えしました。

 経営理念とは、事業への思いを言葉に表したもので、企業の存在意義そのものを言い表しているとも言えます。

 経営ビジョンとは、企業の将来的な理想像で、将来において企業としてこうありたいと思う姿です。

 経営計画は、経営ビジョンを達成するために、自社の土台となる考え方である経営理念を基に具体的な施策をまとめたものになります。経営理念と経営ビジョン、経営計画の関係性は図表1をご確認ください。

  図表1:経営理念と経営ビジョン、経営計画の位置づけ

 

【経営計画の内容】 

 経営計画の内容は、ありたい姿へ至るための具体的な行動をまとめたうえで、スケジュールやシナリオ、分野ごとの施策、そして数値計画を明記します。なぜ(Why)、いつまでに(When)、何を(What)、誰が(Who)、どこで(Where)、どのように(How)、いくらで(How Much)、どのくらい(How Many)といった5W3Hの観点で、具体的な内容にし、整理したものが必要です。

 経営計画の策定は、一般的に図表2のような手順で策定していきます。ステップ1として、外部環境分析、自社環境分析などの現状分析を行ったうえで、経営課題を整理し、方向性を抽出します。ステップ2として、目指す姿である経営ビジョンを設定し、基本戦略や個別の事業のシナリオを策定します。その後、個別戦略の策定を行い、具体的な取組み施策を設定します。ステップ3では、アクションプラン、数値計画を設定します。 

 重要なのは、現状認識や戦略・施策、アクションプランが会社の状況を踏まえた具体的な内容で記述されているかどうかということです。例えば、「新事業の開発」といった程度の内容では、現場は具体的に何に取り組めばよいのか、戸惑うばかりです。「既存の○○技術を改良し、新製品を開発する」など、具体的な内容を示すことです。自社が置かれた事業環境下で、どの事業領域に注力するか、どのように競合する商品やサービスとの差別化を図っていくのか、といった取り組み施策を明確にすることが非常に重要なのです。 

  図表2:経営計画策定の流れ

 

【経営計画策定の効果】   

 実際に経営計画を策定すると、次のような効果が期待できます。

1)経営力のアップ

 経営計画は、計画策定をすれば終わりではありません。その後の実行、実行後の検証、検証後の改善が伴っていなければ、経営目標を達成することができません。こうした計画(Plan)~実行(Do)~検証(Check)~改善策立案(Action)を、サイクルとして継続的に実行することにより、より効果的な目標達成が可能となります。このようなサイクルをPDCAサイクル(マネジメントサイクル)といいます。こうしたPDCAサイクルを意識して回し続けると、企業の経営力は確実にアップしていきます。

2)従業員の自覚の促進

 明文化した経営計画があれば、従業員は会社の目標と到達のための道筋が見えます。これにより、従業員は、個々の従業員自身が担っている業務、役割への期待が分かります。期待が自覚できると、期待に応えるための推進力が生まれます。

3)対外的な信用力の向上

 経営計画を明確にすることにより、利害関係者に対して信用力が高まります。利害関係者とは、金融機関、株主、顧客、取引先、協力先などです。とりわけ、資金提供者である金融機関、株主に対しては、事業成功への道筋や戦略が明らかになることにより一層信用を得ることができます。

 

【経営計画の重要性】

 これまで述べてきたように経営計画は、①現状を把握し ②何を目標とし ③どんな手段をとるか、を明確に示したもので、経営の道しるべ的な役割を果たします。経営ビジョンを掲げても、実際にどのような取り組みをすべきなのかわからなければ現場は戸惑ってしまいます。自分たちの目指すべき方向に最短距離で進んでいくための具体的な行動を明示し、従業員に浸透させるために、経営計画を策定することが大変重要になるのです。

 経営計画は大企業がつくるものという一般認識がありますが、中小企業においても経営計画は有効活用でき、大きな効果が期待できます。経営計画の策定・実行を通じて、対外的に企業価値を高めるとともに、社内的には経営の方向性を共有して全社的な求心力を高めることができます。また、目標達成までの個々の行動や期間が具体的に示されることで実績との比較が可能となり、迅速な軌道修正・継続の経営判断ができるようになります。

 経営計画を社員と共有・実行し、組織の力を引き出すことが成長する企業のヒケツです。

                                                                   

                                  前田 節(まえだ とも)

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