事業再生専門家が語る「成長する企業と衰退する企業の経営」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る

「成長する企業と衰退する企業の経営」

(第8話)

《経営理念・経営ビジョンについて》

   

 300社以上の事業再生案件で成果を上げてきた専門家の視点から、成長する企業と衰退していく企業の経営について、具体的な事例も交えてお伝えしていきます。

今回は、経営理念・経営ビジョンの重要性 についてお話いたします。

 

【なぜ経営理念・経営ビジョンは重要か】 

 企業を取り巻く環境が急激に変化する現在、経営者においては自らが進むべき道に迷うことも多くあることでしょう。そんな時、十分に考えられた経営理念や経営ビジョンは心の拠り所となり、進むべき道へと後押ししてくれる指針となります。また、事業の羅針盤的役割を担う経営計画は経営理念や経営ビジョンを基に作成されます。しっかりとした経営計画の策定には土台となる経営理念や経営ビジョンが必要不可欠です。

 これまで関わってきた成長企業の多くは経営理念や経営ビジョンを大切にし、社内外に情報発信しています。経営層ばかりでなく、社員にも共有されています。一方、再生の状況に陥っている企業のほとんどは経営理念や経営ビジョンが明確でなく、たとえあったとしても経営層にすら浸透していない場合が多いです。

【経営理念と経営ビジョンの違い】 

(経営理念)

 経営理念とは、事業への想いを言葉に表したものです。自分達の事業が社会の中でどのような価値を作り、必要とされ、それにどう応えて行くかを鮮明で具体的な言葉で表現する必要があります。企業の存在意義そのものを言い表していると言えます。

(経営ビジョン)

 経営ビジョンとは、企業の将来的な理想像です。将来において、企業としてこうありたいと思う姿です。

【経営理念を考える】   

 中小企業において、経営理念の多くは創業者の想いによるところが多いと思います。想いに偏り過ぎず、自社固有の考えであるかどうかを重要視して下さい。経営理念の多くに、「社会に貢献する」「お客様に貢献する」「企業価値を高める」「社員を幸せにする」などといった言葉が多く入ります。しかし、これらだけでは不十分です。これらの言葉はどの企業にも当てはまり、自社固有の考えとは言い難いです。

 そこで「なぜ社会に貢献したいのか」「なぜお客様の役に立ちたいのか」「なぜ社員を幸せにしたいのか」ということを再度問いただし、自社固有の考えを導き出して下さい。それは自社の本来の強みの発見にも繋がって行きます。

【経営ビジョンを考える】

 経営ビジョンは企業の将来的な理想像です。自社が目指すべき姿を分かり易く表現したもので、全ての社員で共有することが大切です。●●年後に●●億円の売上達成や●●%の利益計上といった数値目標の検討も重要です。 

【経営理念・経営ビジョン、経営計画の関係性】

(現状把握)

 経営理念、経営ビジョンを考える際、最も重要で最初にするべきことが会社の現状把握です。現状把握が無ければ、具体的で実現可能な将来像(経営ビジョン)を描くことは不可能です。衰退企業は十分な現状把握ができていないケースが多いです。「自分の会社のことは十分に理解しているから必要ない。」「当面の経営は順調だから問題と向き合うのは先に延ばそう。」という考えの経営者が多いように思われます。

 一方で成長企業の多くは常に現状把握に努め、問題の抽出と解決に向けた経営施策を打ち続けています。それは早ければ早いほど、効果的で成果も得られています。

 現状把握の際は以下の4つの視点に立って、漏れ無く整理することをお薦めします。

 ①  財務の視点:売上、利益、資金繰り等の現状

 ②  顧客の視点:顧客ニーズの変化、顧客満足度等の現状

 ③  業務プロセスの視点:生産・営業効率等の現状

 ④  組織の視点:組織統治、社員のモチベーション等の現状

(経営計画)

 経営ビジョンを達成するための具体的な施策を纏めたものが経営計画です。この時に基準の考えになるのが経営理念(存在意義、本質的な強み)です。経営理念に沿わない施策では、ありたい将来像(経営ビジョン)に到達することはできません。

 また、経営計画の遂行では様々な問題に直面すると思います。その時は下図のPDCAサイクルで問題解決に向けた取組みを実践してみて下さい。

※経営計画の詳細については次号のテーマとしております。

【経営理念・経営ビジョンの浸透】

 本来であれば管理職層を含むメンバー全員で問題を共有し、解決しながら、経営理念や経営ビジョンを策定していくことが望ましいです。それが組織を一枚岩にしていくことにも繋がるからです。しかし、中小企業の実務においては、経営者と一部の経営幹部で策定を進めることが多くなりがちです。

 社員の一部には無関心を装う者も少なくありません。どれ程素晴らしい経営理念や経営ビジョンを策定しても実行部隊が理解していなければ全く効果を発揮しません。そこで策定された経営理念や経営ビジョンを浸透させるため、朝礼や会議を活用しながらその重要性と目指すべき姿を繰り返し発信することが大切です。

【まとめ】 

 同じ業界であっても成長企業と衰退企業の差が著しくなっています。成長企業は顧客ニーズを察知したら、素早く行動に移していく力が強いと感じます。その力強さの源は全社員が共有している経営理念や経営ビジョンにあると思います。自分達の目指すべき方向明確なため、最短距離で進んでいます。経営理念・経営ビジョンを整理し社員と共有することが成長企業への第一歩となります。

                                                                 前田 節(まえだ とも)

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