事業再生専門家が語る「転ばぬ先の杖」

~事業再生の状態に陥らないために~

事業再生専門家が語る「転ばぬ先の杖」

(第1話)

《毎期提出する決算書について、銀行は何を見ているのか?》

        

銀行出身の中小企業診断士である弊社代表 前田 節 が事業再生専門家の視点から、事業再生の状態に陥らないために「転ばぬ先の杖」として知っておいていただきたいことをお伝えしていきます。今回は、毎年提出している決算書について、銀行が決算書の何を見ているのかについてお話いたします。

        

〇貸借対照表について

 貸借対照表は決算書の最初にあるため、銀行もまず初めに確認します。貸借対照表とは、決算時点での会社の財政状態を表した財務諸表です。

 では、銀行が貸借対照表の何を一番に見るのかというと、それは「純資産の部」です。「純資産の部」を簡単に説明すると、資産から負債を引いた残りの額のことを言います。銀行は、「純資産の部」がプラスなのかマイナスなのかを必ず確認します。マイナスであることは、債務超過(資産より負債の方が大きい)の状態にあり、銀行からは今後厳しい目で見られてしまいます。

しかし、プラスだからと言って安心しないでください。銀行は貸借対照表の資産の額が本当にそれだけの価値があるのかを銀行の基準で改めて評価しなおします。例えば、バブル時に購入した土地が1億円で資産に計上されていても、その土地の価値が現状2千万円しかないと銀行が評価した場合、銀行は2千万円で資産を計算しなおします。同様に棚卸資産が本当にそれだけあるのか、回収の見込みのない売掛金が含まれていないかなども確認し、銀行は「純資産の部」がマイナスになっていないかを確認しています。一度皆さんの会社の貸借対照表上の資産が本当にそれだけの価値があるのか? 本当の価値に置換えた場合に「純資産の部」がプラスなのかを確かめてみて下さい。

増資を除けば、「純資産の部」を大きくすることが出来るのは毎期の純利益だけです。節税も大事ですが、もしもの時に転ばないためにも、普段からの会社としての体力の増強、すなわち利益の蓄積が重要になってきます。

〇損益計算書について

 損益計算書とは、一定期間の経営成績を表した財務諸表になります。経営成績なので、もちろん黒字なのか赤字なのかが重要になってきます。ただし、銀行は単に黒字なのか赤字なのかだけを見ているわけではありません。経営成績として、今年一年の事業の中でどれだけのお金を生み出しているかを重視しています。詳細はキャッシュロー計算書で確認しますが、簡易的に利益に減価償却費を足すことで、事業で生み出したお金を計算しています。なぜなら、それが銀行からすると融資の返済原資になるからです。

決算書上で赤字でも減価償却費を足し戻した際に黒字になっていれば、銀行は返済原資を生み出していると一定の評価をします。しかし、黒字であっても、足し戻そうと減価償却費を見に行った時に減価償却がなされていなかった場合、本当は赤字だけど減価償却をしないことで黒字に見せかけているのだなと判断します。銀行から見た場合、どちらの方が評価は高いでしょうか? 銀行が重視しているのは返済原資を生み出しているかです。もし、同じ金額だけの返済原資を生み出しているのであれば、前者の決算書上赤字でもウソをついていない決算書になります。一か所でもウソがあれば、銀行は他にもウソがあるのではと考え、信頼が低下してしまいます。

〇数値への理解について

 銀行は、皆さんから決算書を受け取った時に必ず決算書を見ながら質問をされるかと思います。もちろん、銀行の担当者が答えを知りたくて質問している場合もありますが、ある程度答えを分かっているのに敢えて質問している場合もあります。それは、経営者である皆さんがどれだけ決算書の数値について理解しているのかを確認しているからです。決算書の数値についてしっかりと理解している経営者なのか、そうじゃない経営者なのか銀行は質問をすることで見極めています。

 

〇まとめ

 決算書は銀行に提出するものであるとともに、自社の現状を数字で表した大切な資料になります。事業再生の状態に陥る多くの会社は、現状の数字を表した資料であるはずの決算書が、本当の現状の数字を表していません。間違った現状認識からは正しい結果は導き出せません。皆さんも会社の経営の見通しを正しく認識するためにも正しい現状を表した決算書の作成を心掛けてください。

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